D2Cは消費者ニーズの本質を捉え、仕様(モノ)価値から使用(コト)価値にシフトしたビジネスモデル。例えば、Allbirdsは靴(モノ)を売るが、消費者は環境に優しいライフスタイル(コト)を買っている。B2Bでも顧客企業の成功に課金するアウトカムエコノミーの出現で、価値の再構築が起きている。
D2Cがデジタルマーケティングに使うYouTubeやインスタは、ミレニアル~Z世代の利用が多い。彼らはSNSで目にするブランドの世界観やコンテンツに入るためのチケットとしてモノを買う。
モノを安く直販するのがD2Cで、ブランド価値を高めたのがDNVBとする定義は可能である。しかしマットレス専門のDNVBが照明などを拡販すると、VBではなくHB(ホリゾンタル)になる。大手企業がデジタルマーケティングを開始したら、彼らはAN(アナログネイティブ)である。
洋服や靴などの消費財は買い替え需要が安定している。寝具や家具などの耐久消費財は顧客にロックイン、長期に渡るサービス課金が可能である。いずれもニーズが顕在化しているため参入しやすい。似たようなモノが溢れる市場に、コトの付加価値が付いたモノを販売すれば差別化も可能である。
D2Cブランドを作るのは町の職人ではなく、デジタルマーケティングに精通した仕掛け人である。アップルモデルを採用し、モノ作りはオフショアへ、デザインやサービスに価値を置き、社内へ。ブランドの世界観(ストーリー)を押し付けるのではなく、顧客を主語(ナラティブ)に語らせる。
D2Cブランドが保有する価値は、顧客やその中から生まれるエバンジェリスト、語られる体験価値など、不安定で流動的である。価値を維持し続けるため、需要を喚起するコンテンツやソリューションという燃料を燃やしつづける。
2013年に存在したオンラインでコモディティ品を販売する約160ブランドのうち、ファッションや飲料など生活必需品は参入企業が多く生き残ったのは3割、雑貨や幼児教材などはニッチで8割が生存している。生き残った企業の戦略は、サブスクを卒業した消費者の受け皿としてECに誘導したり、価格や課金モデルの柔軟な見直し、商品価値から体験価値へのシフトなど、学ぶべき成功要因は多い。
どんなに価値があるモノでも、その技術や伝統が価格に見合うコトとして認知されなければ売れない。メディアコマースは、独自の世界観で、モノの素晴らしさを伝え(メディア)、共感した人に販売(コマース)し、最近ではオリジナル商品も開発するなど、結果としてD2Cに近づきつつある。
消費者の潜在ニーズはモノを購入した先にあるが、その体験価値を支えるのはモノの品質である。自然素材の寝具を買うことで毎日アレルギーフリーで良質な睡眠が得られる、エシカルに製造されたジュエリーを買い労働搾取に反対の意思を表明する、などの体感価値は劣悪な品質のモノでは得られない。
顧客から選ばれる必然性があること、つまり潜在ニーズ対する最適なソリューションを提供すること。いずれ世界観すらコモディティ化する時代が来る。その時、顧客の潜在ニーズに対して最適なソリューションを提供するために商品(モノ)が果たす役割は大きい。


